木と木をつなぐ金具の名前は?DIYから建築まで使われる接合金物を幅広く調査!

DIY(日曜大工)で棚を作るとき、解体された家具を修理するとき、あるいは建築現場の骨組みを眺めるとき、私たちは「木と木」が様々な方法でつながれているのを目にします。

古来、日本の建築や木工の世界では、「継手(つぎて)」や「仕口(しぐち)」と呼ばれる、木材自体に複雑な凹凸を加工して組み合わせる高度な技術(木組み)が用いられてきました。釘を使わずに巨大な寺院を組み上げるその技術は、まさに職人技の結晶です。

しかし、現代の木工、特にDIYや一般的な木造住宅建築においては、こうした伝統的な技術と並行して、あるいはそれ以上に、「金具(かなもの)」の力が不可欠となっています。

金属製の金具(接合金物)は、木材同士の接合を「より簡単に」「より早く」、そして多くの場合「より安価に」実現させてくれます。また、適切に使えば、伝統的な木組みに匹敵する、あるいはそれを上回る強度(特に耐震性など)を発揮することもあります。

ホームセンターの金具売り場に行くと、その膨大な種類に圧倒されるかもしれません。L字型、I字型、T字型、U字型、穴だらけのプレート、不思議な形状のボルト…。これら一つ一つには、その形状と用途を示す「名前」があります。

この記事では、これから木工を始めたいDIY初心者の方から、自宅の補修を考えている方、さらには建築に興味がある方まで、知っておくと非常に便利な「木と木をつなぐ金具の名前」について、その代表的な種類、用途、そして特徴を、基本的なものから専門的なものまで幅広く調査し、徹底的に解説していきます。

DIYで活躍!「木と木をつなぐ」基本的な金具の「名前」と用途

まずは、ホームセンターなどで手軽に入手でき、DIYプロジェクト(棚作り、箱物、簡単な家具の補修など)で最もよく使われる、基本的な「木と木をつなぐ金具の名前」と、その具体的な使用シーンを見ていきましょう。

【L字金具(アングル)】:最も基本的な直角接合

「木と木をつなぐ」金具の代表格であり、最も多くの人が目にしたことがあるのが「L字金具」です。その名の通り、90度の角度(直角)に曲げられた金属製の金具です。

  • 別名:アングル、コーナー金具、山形(やまがた)プレート
  • 主な用途
    • 直角固定:2枚の木材を90度の角度で接合する際に、内側または外側から当てて補強します。
    • 棚の固定:壁に棚板を取り付ける際の「棚受け(ブラケット)」として。
    • 家具の補強:グラグラする椅子の座面と脚の接合部、本棚やカラーボックスの角の補強。
  • 特徴と種類
    • 形状:単純なL字型が基本ですが、より強度を高めるために、角の部分に斜めの補強(リブ、または「筋交い(すじかい)」)が入ったタイプ(補強アングル)も多くあります。
    • 素材:スチール(鉄)製が一般的ですが、屋外での使用や水回りを考慮したステンレス製、装飾性を高めた真鍮(しんちゅう)製や黒色の塗装が施されたものもあります。
    • :ネジ(ビス)を通すための穴が開いています。単純な丸穴のほか、取り付け位置を微調整できるように長穴(スロット穴)になっているタイプもあります。
  • 使用法:接合したい木材の角にL字金具を当て、それぞれの面に木ネジ(ビス)を打ち込んで固定します。強度を出すためには、木材の厚みや硬さに合った、適切な長さと太さのネジを選ぶことが重要です。

【平金具(プレート)】:2枚の板を平面でつなぐ

L字金具が「角度」をつけるための金具であるのに対し、「平金具(ひらがなもの)」は、2枚の木材を「平面上」でつなぎ合わせたり、補強したりするために使われます。

  • 別名:プレート、フラットバー、I字金具、T字金具、角金具(かどがね)
  • 主な用途
    • 板の連結:2枚の板の端と端(木口)を突き合わせて、その上から平金具を渡して固定し、1枚の長い板のようにします(「I字金具」や「ストレート金具」とも呼ばれます)。
    • ひび割れの補修:割れてしまった板や木材の、割れ目をまたぐように固定し、それ以上割れが広がるのを防ぎます。
    • 平面での直角接合:すのこ(スノコ)のように、平面上でT字型や十字型に木材を組む際の補強に使います(「T字金具」「十字金具」)。
    • 箱物の角の補強:木箱の角(平面)を補強するためにL字型になった平金具(「平角(ひらかど)金具」や「コーナープレート」とも呼ばれます)もあります。
  • 特徴:L字金具と異なり、曲げ加工のない平らな金属板に、複数のネジ穴が開けられているのが特徴です。形状によって、I字、T字、L字(平角)、十字、さらには六角形(ヘックス)など、多様なバリエーションが存在します。木材同士が接する「面」の強度を高める役割を果たします。

【かすがい(鎹)】:伝統的なU字型の接合金具

「かすがい」は、非常に古くから使われている、シンプルかつ強力な接合金具です。

  • 読み方:鎹(かすがい)
  • 形状:カタカナの「コ」の字、あるいはU字型で、両端が鋭く尖っています。
  • 主な用途:2つの木材をまたぐように配置し、金槌(かなづち)で両端の尖った部分を打ち込むことで、木材同士を引き寄せ、強く固定します。
    • 伝統的な木造建築の柱と梁の固定。
    • DIYでは、丸太を使ったベンチの脚の固定や、ウッドデッキの束(つか)と大引(おおびき)の仮固定など、強固な固定が必要な場面で使われます。
  • 特徴:ネジやボルトとは異なり、「打ち込む」ことで固定するため、施工が早いのが特徴です。両端が木材に食い込むことで、木材が離れようとする力(引張力)に対して非常に強く抵抗します。「子は鎹」(子は夫婦仲を取り持つ鎹のような存在である、という意味のことわざ)の語源ともなっており、古くから「つなぎとめるもの」の象徴とされてきました。

【ジョイントコネクター】:家具の組み立て・分解を可能にする

DIYで本格的な家具(ベッド、テーブル、本棚など)を作るとき、あるいは市販の組み立て式家具(ノックダウン家具)で必ず目にするのが「ジョイントコネクター」と呼ばれる一群の金具です。

これらは、L字金具や平金具のように「外側から補強する」のではなく、木材の「内部」や「接合面」に隠れるように取り付けられ、主にボルトとナットの原理で木材同士を強固に締結(ていけつ)します。

  • 主な用途
    • 組み立て式家具の製造。
    • 頻繁に分解・再組み立てを行う必要がある家具(例:引っ越しが多い場合のベッドフレーム)。
    • 接合部を外から見えにくくし、デザイン性を高めたい場合。
  • 主な種類と名前
    • ジョイントコネクターボルト(JCB):頭部が平たく、六角レンチ(ヘックス)で回すタイプのボルトです。
    • 鬼目ナット(おニメナット):木材側に埋め込む、ねじ切りが施されたナット(インサートナット)の一種です。木材に下穴を開け、ねじ込むことで、木材自体がメスネジの役割を果たせるようになります。ジョイントコネクターボルトと組み合わせて使われます。
    • 樽ナット(たるナット):円筒形(樽型)で、側面にボルト用のネジ穴が開いているナットです。木材に開けた穴に差し込み、ボルトを横から締結する際に使われます(ベッドフレームの側板とヘッドボードの連結など)。
    • カムロック(ミニフィックス):組み立て家具で最も多用される金具の一つ。ネジ(コネクティングロッド)を相手の板にねじ込み、もう一方の板に埋め込まれた円形の金具(カムロック本体)をドライバーで回転させることで、ネジの頭を掴み、2枚の板を強固に引き寄せる仕組みです。

これらのジョイントコネクター金具は、木材に正確な下穴(ボルト穴や埋め込み穴)を開ける必要があるため、L字金具などに比べると施工の難易度は上がりますが、仕上がりの美しさと強度の両立、そして「分解可能」という大きなメリットを提供します。

建築・構造で使われる「木と木をつなぐ」専門的な金具の「名前」

DIYの範囲を超え、住宅などの「建物」の骨組み(構造体)において「木と木をつなぐ」場合、DIYで使われる金具とは比較にならないほどの強度と信頼性が求められます。特に地震や台風が多い日本では、木造住宅の安全性を確保するために、法律(建築基準法)で定められた、専門的な「構造金物(こうぞうかなもの)」の使用が義務付けられています。

【羽子板ボルト(はごいたボルト)】:小屋組や梁の接合

日本の伝統的な木造軸組工法(在来工法)において、非常に重要な役割を果たす金具が「羽子板ボルト」です。

  • 形状:長いボルトの一方の端が、羽根つきの「羽子板(はごいた)」のような平たい形状になっているのが名前の由来です。
  • 主な用途
    • 梁(はり)と梁の接合:床や屋根を支える水平な「梁」が、それと直交する別の梁(または桁)に突き当たる部分。
    • 柱(はしら)と梁の接合:梁が柱(通し柱など)を貫通せず、柱の側面で止まる部分。
  • 役割:羽子板ボルトの役割は、「引抜(ひきぬき)防止」です。地震の横揺れや、屋根が風で持ち上げられようとする力(あおり)によって、梁が接合部から「抜けてしまう」のを防ぎます。平たい羽子板部分を梁(引き抜かれたくない側)に引っ掛け、ボルトの先端を、突き当たる相手の木材(柱や桁)を貫通させて、反対側からナットで強固に締め付けます。これにより、木材同士が物理的に「引き離せない」状態を作ります。

【短冊金物(たんざくかなもの)】:柱と梁、梁同士の緊結

「短冊金物」も、在来工法の構造補強において欠かせない金具です。

  • 形状:七夕の「短冊(たんざく)」のように、細長い長方形の金属板に、多数の釘穴(またはビス穴)が開けられた形状をしています。
  • 主な用途
    • 柱と梁(または胴差)の接合部
    • 梁と梁の継手部分
    • 管柱(くだばしら)の柱頭・柱脚
  • 役割:羽子板ボルトが「点」で引抜を防ぐのに対し、短冊金物は「面」で接合部を補強し、地震時などの「ズレ」や「ねじれ」に抵抗します。接合部(木と木が組み合わさる部分)をまたぐように短冊金物を当て、決められた本数の専用の釘(スクリュー釘など)やビスを、指定された穴すべてに打ち込むことで、接合部の一体性を高めます。これにより、建物全体が箱として揺れに耐える力(耐力)を向上させます。

【シンプソン金具】:2×4(ツーバイフォー)工法の中核

在来工法が「柱と梁」で骨組みを作るのに対し、北米から伝わった「2×4(ツーバイフォー)工法(木造枠組壁工法)」は、「枠組(フレーム)」に構造用合板を打ち付けた「壁」と「床」という「面」で建物を支える工法です。

この2×4工法において、「木と木をつなぐ」ために開発され、今やその代名詞となっているのが「シンプソン金具(Simpson Strong-Tie)」です。

  • 名前の由来:「シンプソン・ストロング・タイ」という、米国の金物メーカーの「ブランド名」ですが、2×4工法で使われる高性能な接合金物の総称として、日本でも広く認知されています。(日本国内でも、同等の機能を持つ国産メーカーの金物(例:カナイ、タナカなど)が多数あります)
  • 特徴:2×4工法で使用される規格化された木材(2×4材、2×6材など)に合わせて、あらかじめ設計された専用の形状をしているのが最大の特徴です。薄い鋼板をプレス加工で複雑な形状に成形し、無数の釘穴が開けられています。
  • 主な種類と名前
    • ジョイストハンガー(Joist Hanger):「ジョイスト」とは、床や天井を支える「根太(ねだ)」のこと。「ハンガー」の名の通り、ジョイスト(根太)の木口(端)をU字型に受け止め、それを梁や桁(けた)の側面に釘で固定するための金具です。これにより、根太が重みで落下するのを防ぎます。
    • ラフタータイ(Rafter Tie) / ハリケーンタイ:「ラフター」とは、屋根の骨組みである「垂木(たるき)」のこと。屋根の垂木と、壁の枠組(上枠)とを強固に連結し、台風などの強風(ハリケーン)によって屋根が吹き飛ばされるのを防ぐために使われます。
    • ポストベース(Post Base) / 柱脚金物(ちゅうきゃくかなもの):「ポスト」=柱。ウッドデッキの束柱(つかばしら)や、カーポートの柱などを、コンクリートの基礎(束石)の上に固定するための金具です。木材が直接コンクリートや地面に触れるのを防ぎ、腐食を防ぐ役割も兼ねます。
    • ホールダウン金物(引き寄せ金物):これは在来工法でも使われますが、地震や風圧によって建物が「浮き上がろう」とする力(引抜力)に抵抗するため、基礎と柱(または耐力壁)を強固に連結する、非常に重要な金物です。

シンプソン金具に代表されるこれらの「規格化された構造金物」は、複雑な木組み加工(仕口)を不要にし、専用の釘(CN釘など)を決められた本数だけ打つことで、誰が施工しても一定の強度が担保されるように設計されており、現代の木造建築の合理化と高強度化に大きく貢献しています。

【まとめ】「木と木をつなぐ金具の名前」を理解して適切なDIYを

木と木をつなぐ様々な金具の名前と用途のまとめ

今回は木と木をつなぐ金具の名前についてお伝えしました。以下に、今回の内容を要約します。

・木と木をつなぐ金具はDIYから建築まで用途が広い

・L字金具(アングル)は最も基本的な直角接合に使う

・平金具(プレート)は板同士を平面でつなぐために用いる

・I字金具は板の長さを継ぎ足す際に便利

・T字金具はT字型の接合部を補強する

・かすがい(鎹)はU字型で打ち込んで木材を固定する

・ジョイントコネクターは家具の組み立てや分解を可能にする

・ジョイントコネクターにはボルト式やカムロック式がある

・建築分野では専門的な接合金具が使われる

・羽子板ボルトは梁が柱から抜けるのを防ぐ

・短冊金物は柱と梁の接合部などを補強する

・2×4工法ではシンプソン金具(ジョイストハンガーなど)が多用される

・ポストベースは柱をコンクリート基礎に固定する金具

・金具の名称を知ることでホームセンターでの購入がスムーズになる

・強度や用途に応じて適切な金具を選ぶことが重要

木と木をつなぐ金具には、非常に多くの名前と種類があることがわかります。

DIYの棚一つとっても、建築物の構造体であっても、これらの金具が現代の木工を支えています。

この記事を参考に、用途と強度に合った最適な金具を見つけてみてください。

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