花粉症の元凶は？杉を植えた奴は誰なのか歴史と背景を幅広く調査！

春の足音が聞こえ始めると同時に、多くの日本人を憂鬱な気分にさせる国民病、花粉症。目のかゆみ、止まらない鼻水、そして頭重感に苛まれるたびに、誰もが一度は心の中で、あるいは声に出してこう叫んだことがあるはずです。「一体、こんなに大量の杉を植えた奴は誰なんだ」と。

この怒りと疑問は、決して個人的なものではなく、現代日本社会が抱える大きな課題の一つでもあります。見渡す限りの山々が杉で埋め尽くされている光景は、自然発生的なものではなく、人為的な介入によって作り出されたものです。しかし、その責任の所在を突き止めようとすると、単一の人物や特定の瞬間に帰結するものではなく、日本の近現代史が織りなす複雑なタペストリーが浮かび上がってきます。

本記事では、多くの人々が抱く「杉を植えた奴は誰」という強烈な疑問を出発点として、なぜ日本全土にこれほどまでの杉林が形成されたのか、その歴史的背景、経済的理由、そして現在に至るまでの変遷を徹底的に調査し、解説していきます。そこには、戦後の復興を支えようとした国家の意思、経済成長の光と影、そして予期せぬ時代の変化が深く関わっていました。単なる犯人探しではなく、この問題の根深さを理解するための包括的な情報をお届けします。

杉を植えた奴は誰？戦後の国策と拡大造林計画
杉を植えた奴は誰？放置された杉林と林業の衰退
杉を植えた奴は誰？総括と今後の展望
1. 杉を植えた奴は誰という疑問への最終的な答えとまとめ
2. 杉植えた奴誰についてのまとめ

杉を植えた奴は誰？戦後の国策と拡大造林計画

私たちが現在苦しめられている大量の花粉の発生源である広大な杉林。これらが形成された背景を探るには、時計の針を昭和の時代、特に第二次世界大戦直後まで巻き戻す必要があります。「杉を植えた奴は誰」という問いに対する最初の、そして最も大きな答えは、当時の日本が置かれていた過酷な状況と、それを打破するために国が主導した巨大なプロジェクトの中にあります。

焼け野原からの復興と木材需要の急増

1945年の敗戦時、日本各地の都市は空襲によって焦土と化していました。生き残った人々が雨露をしのぐための住宅を再建することが、何よりも優先されるべき喫緊の課題でした。当時の住宅はもちろん木造が主流であり、復興のためには膨大な量の木材が必要とされました。

しかし、戦時中の乱伐や過度な伐採により、国内の山林は荒廃しきっていました。必要な木材を供給しようにも、山には木が残っていなかったのです。さらに、復興に伴う燃料としての木炭や薪の需要も依然として高く、日本の森林資源は枯渇寸前の状態にありました。この「木材不足」は、単なる物資不足の枠を超え、国家の存亡に関わる重大な危機として認識されていたのです。

加えて、相次ぐ台風被害が日本を襲いました。荒れ果てた山々は保水力を失い、大雨が降るたびに土石流となって下流の集落を襲い、多くの人命と財産を奪いました。治山治水という観点からも、禿げ山に木を植え、森林を再生させることは、国民の命を守るために一刻の猶予も許されない状況だったのです。こうした逼迫した社会情勢が、後の大規模な植林計画の強力な推進力となりました。

拡大造林政策という国家プロジェクトの始動

木材不足と国土保全という二重の危機に対処するため、政府は「拡大造林」と呼ばれる大規模な政策を打ち出しました。これは、成長が遅く建築用材としての利用価値が低い広葉樹林（雑木林）を伐採し、その跡地に成長が早く経済価値の高い針葉樹、すなわち杉やヒノキを人工的に植えるという計画でした。

1950年代から1970年代にかけて、この政策は強力に推し進められました。林野庁が主導し、国庫補助金や融資制度を整備することで、森林所有者や林業関係者に植林を促しました。「銀行に預金するよりも山に杉を植えれば、将来は孫の代まで安泰だ」というスローガンがまことしやかに語られ、杉は「緑のダイヤ」とも呼ばれました。

つまり、「杉を植えた奴」の正体の一つは、当時の政府および林野庁によって策定されたこの国策そのものでした。しかし、それを実行に移したのは、将来の豊かな生活を夢見て、国の方針に従い汗を流して苗木を植え続けた全国の林家や森林組合の人々でもありました。彼らにとって杉の植林は、国への貢献であり、家族の繁栄を約束する希望の光だったのです。誰も数十年後に、その杉が国民を苦しめる花粉症の原因になるとは夢にも思っていませんでした。

植林の指揮を執ったのは誰なのか

では、具体的に誰がこの号令をかけたのでしょうか。当時の政治家、官僚、そして林業の専門家たちが一体となってこの方向性を決定しました。特定の個人の名前を挙げることは困難ですが、当時の農林省（現在の農林水産省）および林野庁の歴代長官や政策立案者たちが、その中心にいたことは間違いありません。

また、戦後の復興を強力に牽引した吉田茂内閣をはじめとする歴代政権も、国土開発の一環として造林を推進しました。さらに、学校教育や地域活動を通じても植林運動が展開されました。「愛林日」や「植樹祭」といった行事が盛んに行われ、天皇陛下によるお手植えも行われるなど、植林はまさに国民的行事として定着していきました。

したがって、杉を植えた主体は、政策を立案した「国」、それを推進した「行政」、そして実際に鍬を振るった「国民」という、当時の日本社会全体であったと言えます。全員が「良かれと思って」行った行為の集積が、現在の杉林を形成しているのです。

なぜ他の樹木ではなく杉が選ばれたのか

数ある樹木の中で、なぜこれほどまでに「杉」に偏った植林が行われたのでしょうか。それには、杉という植物が持つ特性が、当時の日本のニーズに奇跡的なほど合致していたという事情があります。

まず、杉は日本固有の種であり、日本の気候風土に極めて適しています。北海道の一部を除くほぼ全国で生育が可能であり、成長速度が非常に速いのが特徴です。広葉樹が木材として利用できるようになるまで数十年から百年近くかかるのに対し、杉は40年から50年程度で柱として使える太さに成長します。一刻も早く木材を確保したかった戦後の日本にとって、この成長の速さは何よりの魅力でした。

次に、杉は真っ直ぐに成長するという性質を持っています。曲がりくねった木は加工が難しく、建築用材としては歩留まりが悪くなりますが、杉は通直で加工がしやすく、日本の伝統的な木造建築の柱や板材として最適でした。柔らかくて軽く、加工性に優れている点も、大工や製材業者から好まれました。

さらに、当時の技術レベルでも苗木の生産や植栽が比較的容易であり、大量供給が可能であったことも選定の理由です。このように、経済性、加工性、生育の容易さという三拍子が揃っていた杉は、復興期の日本にとってまさに「救世主」のような存在として選ばれたのです。決して悪意を持って選ばれたわけではなく、当時の最適解が杉だったのです。

杉を植えた奴は誰？放置された杉林と林業の衰退

戦後の復興期に植えられた杉は、計画通りであれば伐採され、住宅建材として利用され、また新たな苗木が植えられるというサイクルが回るはずでした。もしこのサイクルが正常に機能していれば、花粉を大量に飛散させる老齢化した杉は減少し、花粉症被害もこれほど深刻にはならなかったかもしれません。しかし、現実には多くの杉が伐採期を迎えてもなお山に残され、花粉を撒き散らし続けています。なぜ、「植えた奴」は「切る奴」にならなかったのでしょうか。

木材輸入の自由化と国産材価格の暴落

「杉を植えた奴は誰」という問いの次に考えなければならないのは、「なぜ杉を切らなくなったのか」という問題です。その最大の転機となったのが、1964年の木材輸入の完全自由化です。

高度経済成長期に入り、住宅建設ラッシュが続くと、国内の木材供給だけでは需要に追いつかなくなりました。木材価格の高騰を抑制し、安価な住宅を提供するために、政府は海外からの木材輸入を解禁しました。その結果、北米や東南アジア、北欧などから、安くて品質の安定した外材が大量に流入することになりました。

広大で平坦な地形で行われる海外の大規模林業に対し、急峻な山岳地帯で行われる日本の林業は、コスト面で太刀打ちできませんでした。伐採、搬出、運搬にかかる手間と費用が高くつく国産材は、価格競争力を急速に失っていきました。市場価格は暴落し、山主が杉を伐採して市場に出しても、経費を差し引くと手元に利益が残らない、あるいは赤字になるという事態が発生しました。

かつて「緑のダイヤ」ともてはやされた杉は、売れば売るほど損をする「お荷物」へと変わってしまったのです。これが、杉が伐採されずに山に放置されるようになった最大の経済的要因です。

所有者不明や担い手不足による管理不全

経済的な価値を失った杉林は、手入れをされることなく放置される運命を辿りました。林業経営の悪化に伴い、若者は山を降りて都市部へと流出し、林業従事者の高齢化と後継者不足が深刻化しました。

杉は植えれば終わりではありません。下草刈り、枝打ち、間伐といった適切な管理を行って初めて、健全な森林として育ちます。しかし、採算の取れない山林に労力と資金を投じる余裕のある所有者は少なくなり、多くの杉林が管理不全の状態に陥りました。手入れが行き届かない山林は、木々が過密状態で日光が地面に届かず、下草が生えないため土壌が流出しやすくなります。

さらに、世代交代が進むにつれて、相続した山林の境界線がわからなくなったり、所有者自身が都会に住んでいて山の場所すら知らないという「所有者不明森林」の問題も浮上しました。誰が所有しているのかわからないため、行政が介入して伐採や整備を行おうとしても、同意が得られず手が出せないという状況が全国各地で発生しています。このように、「杉を植えた奴」の子孫たちは、その杉をどうすることもできないまま、ただ放置せざるを得ない状況に追い込まれているのです。

地球温暖化対策と杉林の関係性

「花粉がひどいなら、税金を使ってでも全部伐採してしまえばいいではないか」という意見もよく聞かれます。しかし、現代においては新たな環境問題が、杉の伐採を躊躇させる要因の一つとなっています。それが地球温暖化対策です。

森林は二酸化炭素を吸収し、炭素を固定する重要な役割を担っています。日本は京都議定書やパリ協定などの国際的な枠組みの中で、温室効果ガスの削減目標を掲げており、その達成のために森林による吸収量がカウントされています。もし、広範囲にわたって杉林を伐採してしまえば、一時的とはいえ二酸化炭素の吸収源を失うことになります。

もちろん、若い木に植え替えることで吸収能力は維持・向上されますが、皆伐（一度に全ての木を切ること）して植え替えるには莫大なコストと労力、そして時間が必要です。また、急激な伐採は地盤の緩みや土砂災害のリスクを高める可能性もあります。

さらに、杉林がなくなれば花粉症は解消されるかもしれませんが、急激な環境変化が生態系にどのような影響を与えるかも未知数です。このように、環境保全という観点からも、単純に「全部切ってしまえ」とはいかないジレンマが存在しています。現在の杉林問題は、過去の経済政策の失敗だけでなく、現代の環境問題とも複雑に絡み合っているのです。

杉を植えた奴は誰？総括と今後の展望

ここまで、杉林が拡大した歴史的背景と、それが放置されるに至った経緯を見てきました。「杉を植えた奴は誰」という問いに対し、特定の個人を指弾することは無意味であることがお分かりいただけたかと思います。それは、戦後の日本という国家が生きていくための必死の選択の結果であり、その後の経済構造の変化という荒波に翻弄された結果でもありました。最後に、この問題の総括と、私たちがこれからどう向き合っていくべきかについてまとめます。

杉を植えた奴は誰という疑問への最終的な答えとまとめ

結論として、「杉を植えた奴」とは、戦後の資源不足と国土荒廃に立ち向かった「国策」であり、復興と経済成長を願った「国民の総意」でした。そして、現在も花粉が飛び続けている理由は、木材自由化による国内林業の競争力低下、安価な輸入材を求めた市場の需要、そして所有者の高齢化や不在による管理放棄など、社会構造全体の歪みにあります。

現在、政府や林野庁も手をこまねいているわけではありません。花粉の少ない品種（少花粉スギ）や花粉を出さない品種（無花粉スギ）への植え替えを推進し、そのための苗木生産体制の強化や、伐採・搬出の効率化を図るための高性能林業機械の導入支援などを行っています。また、国産材の利用拡大を目指し、公共建築物への木材利用の促進や、バイオマス発電への活用など、新たな需要の創出にも取り組んでいます。

しかし、数十年かけて作られた広大な森林を転換するには、同じように数十年単位の長い時間が必要です。特効薬のような即効性のある解決策はありません。私たち消費者が国産材の価値を見直し、積極的に利用することも、巡り巡って花粉症対策につながる一つの行動と言えるかもしれません。